産婦人科のウラ 樫野貴之

2012年11月15日

第三話 風俗嬢が来た!

風俗店における嬢は定期検査を欠かさない、というわけではないようだ。
風俗店の基準は正直バラバラ。嬢個人は誰も助けてくれない。
さらに、サービス内容で感染のリスクも違ってくる。
自分の身は、自分で守るしかない。風俗嬢と性病の実情とは。


「風俗」と言えばピンからキリまである。しかし、なんにせよその道の嬢は大変だ。
私の知る限り、風俗嬢の性病チェックというのは、管理の仕方が店によってバラバラだ。店側が検査を最初から義務化している所もあれば、そうでない所もある。また、風俗嬢がする確定申告(をするのか定かではないが)上必要経費になるのかどうか分からないが、どちらにせよ、費用も含め各自が個人持ちで行うことが多いようだ。何しろ、店側にして言えば法律で決まった検査というのはない。努力義務なのだ。当然、しわ寄せは労働者である風俗嬢に来る。


とある普通の外来日。朝早くから一人の患者が来た。
年齢は26歳。とある都市のソープランドで働いているCSW(コマーシャルセックスワーカー)、いわゆる風俗嬢である。

「今日はどんなことで来られましたか?」
「あの〜性病の検査をしてこいって言われまして・・」
「性病ですか。色々種類があるけど、なんの検査が希望かな?」
「よくわからないんですが、店の方からしてこいって言われました。しないと店に出られないって。」
「そうですか。では、クラミジアと淋菌の検査と膣内の培養の検査をしましょう。それと、エイズの検査はどうですか?」
「あ、それもお願いします」
「それから、梅毒や肝炎の検査も必要かもしれませんね。どの程度やればいいのかな?」
「店の方で、調べてこないと働かせてくれないって言われたのでよくわからないんです。」
「分かりました。では、今言った検査位で良いと思いますよ。では、今から診察しますので内診台に上がってください。」

膣内容物を培養する検査、クラミジアと淋菌の検査を終えて元の診察室へ戻った。

「検査は自宅の近くでなくて、勤め先の近くの方がよくなかったのかな?」
「先生、店の近くだと落ち着かないのと、1〜2時間待たされるので気が気じゃないんで嫌なんです。」
「そうですか・・色々あるんですね。分かりました。今日はこの後採血をしていって下さい。結果は来週になったらわかるので、その時来て下さい。」
「わかりました。ありがとうございます。」

さて、風俗嬢が病気にかかる理由や実状について説明しよう。

性行為感染症というのは、風邪やインフルエンザのように飛沫感染で成立するものではなく、接触感染、血液(精液)感染がほとんどである。当然、検査内容もそれに合わせて行う。

まず基本として、直接接触のある方が感染リスクは高いというのは、言うまでもない。
例えば、ソープランドでもコンドームを使う使わないで違うし、デリバリーヘルスタイプのものでも同様である。
通称「生で中出し」をするような所だと、エイズ、B型肝炎、C型肝炎、梅毒など、様々な感染症の可能性がある上に、膣内のバイキンや子宮の入口の頚管腺に潜むクラミジアや淋菌感染症に気を付けねばならない。興味深いことに、同じ病気でもデリヘルや抜きキャバのような精子を口腔内で出すようなタイプでは、精液内に潜むクラミジアや淋菌感染症を咽頭に認めることがある。
つまり、サービス内容によってかかりうる病気の質が違ってくるということだ。
それ以外に、ケアされにくい尖圭コンジローマ、性器ヘルペス、子宮頚部異形成(子宮頸癌の前癌状態)などの病気もある。これらも、最近の考え方から行けば立派な性病と言えるだろう。

一般的に婦人科医として気を付けなければならないのは6種類。
性器クラミジア感染症(子宮頸管)、淋菌感染症(子宮頸管)、梅毒、B型肝炎、C型肝炎とHIV感染症(血液)だ。
もし、嬢がこのコラムを読んでくれているのであれば是非この6項目の検査は勧める。
特に、クラミジア感染症は放置していると不妊症のリスクが高く、積極的な検査、治療を勧める。
さらに、性器クラミジア感染症(子宮頸管)、淋菌感染症(子宮頸管)は、咽頭感染のリスクがあり咽頭検査も施行した方がよい場合がある。

検査項目はこれだけではない。
子宮頚癌検診(内診)やカンジタやトリコモナス(膣炎)も追加するケースがある。
まずこれだけすれば十分であろう。
他にも尖圭コンジローマやヘルペス感染症などもあるが、皮膚に症状がでていることが多いので、比較的見つかりやすい。

そうそう、女性がかかりやすいカンジタ膣炎というものがある。
しかし、これは性感染症ではないので、風俗で働いている嬢のスクリーニング検査としては必要ないだろう。

決して立派とは言えないが、有史以来の職業だ。色々、必要なのである。
かくいう私も男だ。お世話になったことは何度かある。
こういう時は、医学的知識から感染しないよう注意するものだ。各人、お気を付けなされい。
posted by 樫野貴之 at 04:15| Comment(0) | 産婦人科のウラ
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